エステ開業では、機器や店舗の選定以外に、どのような届出や手続きをしなければならないのでしょうか?
エステティシャンとして働くには特別な資格等はありませんが、必要な手続きを怠ってしまうと、のちのち大きなトラブルに発展してしまう可能性があります。
今回は、エステサロン開業時の届出や手続き方法、注意すべき点をまとめてご紹介します。
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エステ開業に必要な届出
エステは資格や免許がなくても経営できる、「自由業」にあたります。認定エステティシャンといった民間資格はありますが、取得しなくてもエステ開業は可能です。
美容学校に通って技術を向上することはもちろん、独学でも経験をつめば誰でもエステサロンを開いて活躍できます。
ただ、開業する際は届出を提出しなければなりません。個人事業主と法人で中身は変わってきますので、まずはそれぞれのケースについて詳しくみていきましょう。
個人事業主の場合
個人事業主として開業する場合、手続きはとても簡単です。基本的に、管轄する税務署に対して、原則開業した日から1ヶ月以内に「個人事業の開業届出(開業届出書)」を出すだけです。
開業届を提出するメリットは次のようなものがあります。
- 青色申告で税申告できる
- 屋号を使った銀行口座を作れる
- 個人事業主向けの共済等に加入できる
青色申告をすると最大65万円の特別控除を受けられる、最大3年間まで赤字を繰り越せるなど、税制面での優遇を受けられます。また屋号の銀行口座を持てば、帳簿をつける時に役立ちます。
開業届出書の提出以外には、年金の種別変更や税金関係を個人事業主に切り替える必要があるので忘れないようにしましょう。
法人の場合
エステを開業される方の多くは個人事業主として起業されますが、一定額以上の収益が見込める場合は税金の観点から法人化した方がよいケースもあります。
法人化する目安は、事業所得が年間500万円を超えるかどうかです。事業所得とは、売上から仕入れ額などの経費を引いた金額のことで、自身の収入を差し引く前の利益ともいえます。
個人事業者からスタートさせたのちに法人化する場合、設立届出をはじめとする書類を税務署・税事務所・市区町村役場へ提出しなければいけません。必要な書類はそれぞれの自治体によって異なるため役所等に確認をしてみましょう。
また役所等での手続きのほかにも、所有している美容機器の機材などを個人から法人に売却する手続きも併せて行います。法人化はとても煩雑な手続きとなりますので、少しでも不安な方は税理士への相談をおすすめします。
保健所への申請が必要なケースと不要なケース
基本的には先ほどの手続きで完了ですが、保健所にも申請が必要な場合があります。そこで、申請を行うべきケースとそうでないケースを確認していきましょう。
不要なケース
マッサージや痩身など国家資格を必要としないサービスで、特別な衛生環境も求められない場合、保健所への申請義務はありません。
そのため、エステサロンの開業では保健所へ申請しなくても良いとされています。
必要なケース
美容師免許や管理美容師などの国家資格を求められる美容院やまつ毛エクステ店、まゆ毛カット店などの場合、高い安全性や衛生環境が求められるため「美容所開設届書」を保健所に申請しなければなりません。こちらは、開業日の1〜2週間前に提出します。
施設の基準等を満たし審査が通った場合、「美容所確認済書」が発行され、晴れてサロンをオープンできます。主な施設基準例は以下の通りです。
主な施設基準例
- 施術スペースの面積が13平米以上
- 床や壁は不浸透材を使用すること(絨毯はNG。フローリングはOK)
- 換気ができること
- 給排水設備がある
この届出は、施術内容に左右されるため、不安な場合は提供する施術メニューを決めた後に、詳しい先輩や業者に相談することをおすすめします。
また、顔に刃をあてるような施術メニューがある場合やネイルサロン、治療効果をうたったマッサージを行う場合も保健所への美容所登録が必要となりますので併せて覚えておきましょう。
開業届出書の記載事項
個人事業主が税務署に提出する開業届出書には、次のような項目を記載します。
開業届の記載事項
- 税務署名
- 納税地(自宅の場合は自宅住所)
- 氏名
- 生年月日
- マイナンバー
- 事業名(セラピスト、リラクゼーション事業など)
- 屋号
- 開業日
- 具体的な事業内容
開業届は控えが残らないため、2部用意するかコピーをして保管すると安心です。後日銀行の融資を受ける際や補助金などの申請時に必要な場面が出てきますので、税務署の受領印が押された届出を控えとして持っておくのが良いでしょう。
その他、事業所を納税地とする場合や源泉所得税に関する手続きもそれぞれの自治体に事前に確認をしましょう。
まとめ
エステサロンの開業時に欠かせない届出と手続き方法についてご紹介しました。
エステを開業するための資格や免許はありませんが、開業届を税務署に提出しなければなりません。また美容院やまつ毛エクステ店、ネイルサロンを併設する場合は、美容開設届書を提出し保健所からの許可をとる必要があります。
開業届は控えがないため、コピーして手元に残しておきましょう。